酒薫旅情
滋賀についての本(見たまんま表紙が琵琶湖)です。
BOOKasahi の書評欄から引っ張ってきたのですが、この本を扱ったとする本書の方は読んでいません。
小林聡美は『紙の月』でシビれさせられたので、こっちも気になります。
私用で郷里滋賀へ向かうお供探しと偶然合致して、すぐさま触手が伸びました。
さっそく京大、民俗学、琵琶湖博物館館長など、プロフィールにあるキーワードだけで、なんだか当たりを引いちゃったなあ。といったところ。ありがとう BOOKasahi。いつも世話ンなるねえ。
中身はのっけから酒を飲むことの言い訳に始まって、締めも「泥酔から醒めての言い訳」。
ただこの言い訳ってのがなんとなくいいなあ、言い訳って言いながらフィールドワークと酒の緊密さにを説得力を持っていたりします。俳句が民俗学の歴史的資料となるというはなしもいい。1〜4章までは日本、5章エチオピア、6章中国海南島で、終止酒と俳句、国内は肴のはなし。
わたしは子供の頃を滋賀(の新興住宅地)で過ごしただけなので、酒と肴に興味がうつるはずもなく、食文化としても両親は京都人なので滋賀らしさのようなものも感じたことはありません、小学校の授業で菜の花漬けを漬けたくらいです。お酒を飲むようになってから滋賀の郷土食がどういうものなのか気になっていました。
著者も近江に越す段、はじめに芭蕉と鮒鮨が浮かんだそうで、名物から書かれています。
驚いたところで、
「ジョキ」—鮒鮨になるニゴロブナの刺身で近江八幡のお店で知ったそう。
日本酒はいいものが多いらしく、「松の司」「大治朗」「七本槍」「琵琶の長寿」という銘があがっています。この帰省にはあまり時間がなかったので、父親にいい酒屋さんに連れてもらって「松の司」の純米吟醸を飲むことだけはできました。
鮒鮨を漬ける時のご飯の行方も追っていて、頭と尻尾はそこについたご飯と大葉、わさびを混ぜてたたく。残ったご飯は小さなお団子にして、小麦粉をまぶしてきつねいろになるまで揚げる。どっちも美味しそうです。「鮒鮨に優るとも劣らない酒の肴」ですって、食べてみたい。
こういった知識がキチキチにつまっていまして、ほんとうに面白い。知りたかったことがさらなる発酵とともに鮒鮨状に詰め込んでありました。滋賀の地質と水と造り酒屋のマップまでありました。
海外の章も、エチオピアのコンソ・サウガメ村というビールが主食の村の話などは驚きにみちています。最後までキチキチに詰まっていて満腹でした。
驚くべき智の泉。とても書ききれません。琵琶湖に浮かぶ沖島についても「湖内に島があって人が住んでいる島というのは、世界に三つしかない」ということまで知ってしまいました。
沖島で鮒鮨とふれあう旅がしてみたくなりました。